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ハガキでは間に合わないときの手紙ばこ。

ヘタしたら死ぬ仕事:国語教員備忘録  その2

国語で学ぶ「ことばの力」。

前回は基礎となる四つ、

1聞く
2話す
3読む
4書く

についてまとめました。

今回はその他ということで、あと三つ、ことばの力を鍛える上で重要な項目についてまとめます。

 

ことばの力:その他へん

1 漢字・文法・語彙
2 古文・漢文
3 書道(習字)

1 漢字・文法・語彙

ブロックで家を作る際、ブロックが多いほど大きな家を建てることができます。
様々な色があればカラフルな家になりますし、形が複雑なものを使えばおもしろいシルエットをつくれます。
基本的な法則を知っていれば応用にもつなげられます。

漢字・文法・語彙。
これらは自分の想いを伝えるための、頼もしいサポーターになってくれるのです。

2 古文・漢文

えー、いろんな場面で耳にしますね。

「古文や漢文なんて受験でしか使わないし、勉強する意味ないじゃん」

……それさあ、イギリス人に向かって
シェイクスピアなんて古くさいし時代遅れだし、読むのやめましょうよ」
って言うてんのと同じやぞ。
鼻で笑われんぞ。
(あ、日頃の鬱憤が出ちゃった。反省☆)

古文・漢文の勉強が直接何かに役立つことはまれです。
教養として人生を豊かにするために読むんだ! …なんて、ふわっふわな考え方もあります。

私が考える古文・漢文を学ぶ意義は以下のことです。

「日本語のルーツにふれる」

今使っていることばはどこから来たのか?
昔の人はどんな考えを持っていたのだろうか?

自分の母親がどんな人で、どんな幼少期を過ごしたのか。
また、自分の母親の母親はどんな人だったのか。
彼女たちが大切にしていたことはなんだったのだろうか。

自分の親について、そのまた親について知りたいと思うように、

「それはどこから来たのか?」

ということを知るのは無駄ではないのです。
自分のルーツを知ることで納得できたり、落ち着いたりすることがあります。

私は、古典作品を読むことは翻訳の一助にもなると考えています。
現代とは違う価値観・ことばにふれることで、「自分の常識が通用しない世界」について学ぶことができるからです。

3 書道(習字)

これも、いろんな意見が出ていますね。
美しい字が書けることは素晴らしいです。
でも、一億総活字時代の現代において、美しい字が書けるということにどれほどのメリットがあるのでしょう?
日常のメモ書きがみみずの大運動会であっても、中身が良ければそれでよくない?

ぶっちゃけ、私はこの派閥です。
PCで清書すればいいんだから、ノートもメモもいくらでも汚くてOK!
ノート点検? 形だけ整えたものに何の意味があるの? っていうスタンスです。

でも、それはそれ。これはこれです。

中身としての文字、箱としての文字

文字には二つの役割があります。
一つ目は、連なって文章となり、一つのまとまとまりとして意味を伝えることです。
つまり、中身を伝える役割です。

二つ目は、文字の外観・外見。
つまり、デザインそのものです。
漢字は六書と呼ばれる四つの造字法と二つの転用法から成り立っています。

その中の一つ、「象形」は有名ですね。
山、川、馬。
これらは実際のモノの形をかたどって漢字が作られています。


横棒の長さ、点の位置、はらいの向き。
なぜそんなふうに書くのか?
そこにはルーツとなる実物、理由があるのです。

お手本に忠実に書くことは、そのルーツをたどることです。
そして、ルーツをたどったあとは未来に目を向けます。
基本のあとの応用、アレンジです。

(ここからは私個人の考えが色濃く反映されています)

基本を学び、応用につなげる。
「青空」「飛翔」「蒼天」などなど。

楷書で基本の形に慣れたら、アレンジにうつります。


「青空」なら、もっと"青空感"を高めるためにはどうすればいいか。

青の字を軽くつぶしてのっぺりした感じに書いたらどうだろう?
空の"エ”の字の下のラインを地平線に見立てて、思いっきり長くしてみたらどうか?
水も使って、文字にグラデーションをつけてみたら?

 

などなど、文字の外形を工夫し、文字の内面・意味を伝えやすくする方法を考えていくのです。


文字の外側・形と、文字の内側・中身はリンクしています。


そのつながりに目を向けることが書道の意義の一つだと考えています。

なお、できあがった作品に対して工夫点や自分の意図を文章でまとめることで、書く活動にもつなげられます。
他の人の作品を見たり、感想を書いて交流するのもいいですね。
書道、実は一石二鳥にも三鳥にもなる活動なんです!

(ぶっちゃけ、美術のカリグラフィーとかぶるところもあるんだけど、書道は筆と墨だけ! っていうしばりでやるからいいかな、って)

あと、書道という作品づくりに没頭することで、自分との対話にもなります。
この「自分の作品に一対一で向かい合う」っていう時間が最近では少なくなっていると思うので。
文科省はアクティブラーニング推しですし。


もちろん、基本に忠実に三、四時間ずーっと楷書を書き続ける、という学び方もあります。
時間と回数を重ねることで、ようやっと見えてくるものもあります。

……まあ、でも……。

正直、飽きませんか? 


私自身、そこまで書道に関する経験が無い、というのもありますが、なかなか……。

あと、実際の書画展の作品ってすごく躍動感があるじゃないですか。


楷書であっても、はらいの部分が力強く強調されていたり、
行書なんて大きさも向きもばらばらで自由だったり、
和歌のかな文字は野の花みたいに画面にのびのびと生えているし。

やっぱ書きたいじゃないですか、そういうの。
せっかくの実技タイムだしね!

書道へん、思った以上に長くなってしまいました。
なんだかんだいって楽しいですからね。

まあ、制服に墨がついたとか筆落として周りの子に付いちゃったとか墨汁ちゃんと締まってなくてカバンが大惨事ですとか……まじ勘弁してよってアクシデントも多いけどね!

《おすすめ図書》

いい文字ってなんだろう?

そのヒントをもらえる本を2冊紹介します。

 

文字に美はありや。

文字に美はありや。

 

リンクは単行本ですが、文春文庫から文庫も出ています(720円税抜)。

ここに載ってる土方歳三近藤勇の書(っていうか手紙なんですが)、すごくいいんですよね!

書き手の性格や意気込みが伝わってくる字です。

 

書のひみつ

書のひみつ

  • 作者:古賀弘幸
  • 発売日: 2017/05/12
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

1,650円(税抜)で、やや大判なムック本です。

フルカラーで書を大きく見られるのが長所です。

イラストや説明もあるので、入門書みたいな感じですね。

 

次は「小説を教えるってどういうこと?」についてまとめたいと思います。