チャイニーズ・ドリームに想いをはせるー”正しい”が決められた世界でー その1
あなたの中国はどこから? 私は三国志からです。
そして晋、南北朝、隋、唐、五大、宋、明、清、元を吹っ飛ばして中華民国に行き、台湾を周遊したのち、そのままSFの世界に飛び立ちます。
(中国の王朝はもしもしかめよ♪ のリズムで読んでください)
細かいことをいうと、杜甫や李白が活躍する唐の時代は少しだけ心得があるのですが、ぶっちゃけ三国志とSF以外は分かりません。
それが私にとっての中国でした。
時は代わって令和二年。
私は羅小黒戦記にドはまりします。
そこで初めて気づいたのです。
…私、中国のこと何も知らない、と。
周辺の台湾・香港・マカオには行ったことがあるので、多少の中華情報は得ているのですが…。
まあ、周辺の観光地で満足していたというか。
別に本土まで行かなくても中華気分は味わえるというか。
なんちゃってチャイナで満足しようとしていた自分に気づいたというか。
…これではいかん! と、一念発起したわけです。
今の中国はどんな国で、どんな理念をもっているのか。
ちゃんと自分で調べて自分で考える。
自分なりの答えを出しておく。
では、前置きが長くなりました。
中国の理想・夢とはなんのなのか? 私の自由研究、スタートです!
(…長くなりそうなので急遽分けました)
『チャイニーズ・ドリームに想いをはせる
ー"正しい"が決められた世界でー』
0 研究動機
1 現在の中国ー経済発展ー
2 民主主義の限界と共産主義の未来
3 ネット社会と私たちの未来
4 エピローグ
1 現在の中国ー経済発展ー
GDP(国内総生産ランキング 参考:グローバルノート)
一位 アメリカ 21.43兆USAドル
二位 中国 14.34兆USAドル
三位 日本 5.14兆USAドル
なお、2019年度のGDP成長率は年6.1%にもなったそうです。
(同年のアメリカは2.2%、日本は0.7%)
中国の経済発展の要因は様々にある。
その中でもとりわけ効果が大きいのがインターネットを主軸とした情報技術産業だ。
中国二大企業、アリババとテンセント。
どちらも中国内の主要産業を牛耳っている。
いわゆるGAFA的な存在だ。
中国の経済発展のキーは二つ。
1.自給自足のデジタルプラットフォーム
(GAFAに利益をかすめ取られない)
2.戻ってきた留学生:海亀(ハイグイ)
(能力を生かせる場所ができた)
1.自給自足のデジタルプラットフォーム
(GAFAに利益をかすめ取られない)
GAFA(Google・Apple・Facebook・Amazonの4社のこと)はインターネット事業で得た潤沢な資金をもとに様々な事業に投資し、その利益を得てさらに巨大に成長してきた会社です。
(なお、この「自社の利益を他社に投資してさらなる利益を得る」手法をCVC:コーポレートベンチャーキャピタルといいます)
GAFAのすごいところは、一度もうける仕組みを作れば半永久的に利益が得られるところです。
しかも、GAFAは中国をのぞく世界中に展開しているため、世界中から小金を集めることができます。
一つ一つの回収利益は小さくとも、世界中となれば巨額の利益となります。
利益のあるところには投資が入ります。
さらなる資金が投入され、投資された企業はますます利益を上げます。
投資家たちはそのおこぼれをいただき、さらに投資を重ねます。
富めるものはますます富み、というマタイの法則よろしく、GAFAは今後もますます利益を上げていくでしょう。
世界各国の企業が核の傘ならぬGAFAの傘のもと、小金をせっせと集めてもGAFA以上にはなれない。
その傘に風穴を開けんとしているのが中国の巨大企業・アリババとテンセントです。
アリババとテンセントは中国というGAFAの傘の届かない場所で切磋琢磨しています。
約14億人の他国から奪われることのない顧客とともに、自国内で利益を循環させています。
(……もともと、中国がGAFAを国内に入れなかったのは情報統制のためだと思うのですが、結果として、自国産業を守ることになったんですよね)
一人っ子政策を廃止した中国ですが、今後は日本と同じく少子化に苦しむだろうといわれています。
それでも、十数億という人口があれば国内で充分経済を回していけます。
(ちょっとうろ覚えなのですが、共同市場だったか単一市場だったか、一つの経済圏を成り立たせるために必要な人口は約一億人といわれています。
日本は今のところ、国内の人口だけで独自の経済圏を維持できます。
これが一億人を切ると、経済圏が維持できなくなるのです(住民の生活が成り立たなくなる)。
お隣の韓国がアイドル産業やIT産業に力を入れるのは、人口が少なく(約5,100万人)、自国内だけでは経済圏を維持できないからなのです)
国に守られた経済圏で他国からの利益搾取がなく、利益をこつこつと積み立てることができた。
それが、中国が発展してきた理由の一つでしょう。
2.戻ってきた留学生:海亀(ハイグイ)
(能力を生かせる場所ができた)
かつて、中国人にとってのチャイニーズ・ドリームは
「お金をできるだけ稼いで、外国に行くこと(共産党から自由になること)」でした。
日本国憲法代14条では、
「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的、又は社会的関係において、差別されない」とあります。
中国と日本との大きな違いの一つは、門地(出身)による差別があることでしょう。
出身地により農村戸籍と都市戸籍に分けられ、農村出身者は勝手に都市部に移住できません。
一応、出稼ぎ労働者もいますが、農村出身者が都市部で暮らしても都市生まれの人と同じ社会保障を受けることはできません。
出身地という生まれながらの枷から自由になる方法は一つ、現代版科挙:高考(ガオカオ・日本のセンター試験のようなもの)です。
中国では学歴が重視されるため、出身大学によって将来が決まってしまうといっても過言ではありません。
ただでさえ人口の多い中国、高考試験は熾烈を極めます。
そこで、資金のある富裕層の学生は海外留学を目指すのです。
2018年度の中国人留学者数は66万2,100人(同年の高考受験者数の6.8%にあたる)。
日本の海外留学者数は5万8,720人です(文科省サイトより)。
単純に13億:1.2億で比率を比べると、中国のほうが4%多いくらいですね。
比率にそこまでの差はありませんが、重要なのは卒業後です。
かつて、海外の有名大学へ留学した中国人エリートたちは、そのまま現地のグローバル企業に就職することがお決まりのコースでした。
中国に戻っても、海外と同じ水準の給与が得られないからです。
しかし、現在は違います。
アリババ、テンセントなどのメガプラットフォーム、ファーウェイ、ZTE、OPPOなどのITメーカーなどなど。
彼らが活躍できる場が整っているのです。
さらに、中国政府は海外人材呼び戻し政策を実施し、留学生の国内回帰を奨励します。
(「留学人員創業園」、「海外高層次人材引進計画:千人計画」など)
また、中国人に最も人気の留学先であるアメリカでは、前大統領の影響による米中摩擦も相まって、中国への帰国を希望する学生が増えています。
海外で学び、中国へと帰る。
かつて、やりたくてもやれなかったことが今はできる。
能力のある若い人材が活躍できる場がととのったこと。
これが、経済発展の二つ目のキーです。
最初に中国のGDP成長率は6%を越えている、と書きましたが、この数字を怪しいと見る人は大勢います。
コロナウィルスが蔓延する以前に中国の経済発展は停滞がはじまっていた、という意見もあります。
農村部と都市部の格差も大きく、都市部の若年層失業率(16~24歳の失業率)は2018年以降10%以上をキープしています(中日webより)。
どの世界にも明と暗があります。
それでも、経済的に発展できたことは明るいニュースです。
しかし、十分な収入が得られたとしても、それがセーフティにならないのが中国です。
経済的な自由はあっても、権力にたてつけば一瞬で拘束される。
次回、「2 民主主義の限界と共産主義の未来」です。
【参考】
アリババとテンセントの企業の内情、留学生情報、中国の学生の生活などが詳しく書かれています。
(…意識的が無意識かは分かりませんが、政治に関する話題がほぼないのが気になる一冊)
ブログ上では語らなかった、経済と軍事の関連など細かいところまで網羅された一冊。
こちらは次の記事でもたくさん参考にさせてもらう予定です。