今日を摘む

ハガキでは間に合わないときの手紙ばこ。

羅小黒戦記を視聴し、次の問いに答えなさい。

せんせいのなつやすみ。29日目


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問)羅小黒戦記の結末は、以下のうちどれに当てはまると思いますか?
  
   ①グッドエンド ②バッドエンド ③メリバエンド

  上記の中から一つ選び、選んだ理由を800字以上で説明しなさい。
  なお、字数制限は設けないものとする。

  ※メリバエンド……メリーバッドエンドのこと。受け手の解釈により、グッドエンドにもバッドエンドにも受け取ることができるもの。

もし、羅小黒戦記を教材として取り上げるとしたら?

自分だったらこうするかな、というものを書いてみました。
まあ、”教材”っていうと仰々しいですが、国語において教材とは、"考えるヒント・きっかけ"みたいなものなので。
(国語のこのゆるさが好き)

ー・ー・ー・ー

〔解答例〕
・選んだ結末  ①グッドエンド
・理由

私は、羅小黒戦記の結末はグッドエンドであると考える。
理由は二つある。

1 敗北=バッドエンド……ではないから
2 フーシーの選択を肯定したいから

理由1 敗北=バッドエンド……ではないから

 まず、私の推しキャラクターはフーシーである。
フーシーは主人公の敵であり、物語は彼の敗北で幕を閉じる。
そして、自身が犯した罪相応の罰を受ける(と、いう書き方でにごします)。

しかし、それはあくまでフーシーの行動の結果である。
結果の前に過程がある。

フーシーが作中で戦っていたムゲンというキャラクタ-。
彼は最強の存在として羅小黒戦記の世界に君臨している。
つまり、人類最強のオメガウェポンである。

ー最強の敵をどう降すのか!?ー

すでにこの時点で少年マンガ顔負けのドキドキワクワク展開が始まっているのである。
真っ向勝負ではまず敵わない最強の敵を相手に、フーシーは知恵の力でもってこのバトルを制する。

フーシーのもつ能力、強奪。
彼は他者の能力を奪い、それぞれの力を組み合わせ、ムゲン様という人類最強兵器に立ち向かう。


そして、ムゲン様(人類最強のオメガウェポン)をなんとか出し抜き、シャオヘイを奪取するという超高難易度ミッションをクリアーする。

その上、領界の展開をも成し遂げる。
いわば、ムゲン様という最強の敵に対して、二度の勝利を収めたのだ!

フーシーが妖精たちから奪った能力。
これらの力も、ただ力任せに奪ったのではない。
精選されている。

 

・霊音……ムゲンさまの鉄の防御を突破できる、唯一無二の武器。


・霊爆……五行における"火剋金”(火は金属を溶かす)
     木属性であるフーシーにとって、金属性のムゲン様は弱点にあたる。
     五行思想における、”金剋木”(金属製の斧やのこぎりは木を傷つけ、斬り倒す)


     つまり、霊爆は自身の弱点を補い、相手より優位な立場を得るために取得したのだ。


・画霊……空を飛ぶ能力の補完。
     離島組で空を飛べるのはシューファイだけですね。
     (ちなみに、シューファイは水属性なので、ムゲン様の金属性とは"金生水"の関係にあります。
     金属の表面には凝結により、水が生じる。


     簡単に言うと、ムゲン様にとって水属性のシューファイは格下にあるわけです。
     己界に取り込めることも相まって、シューファイにとって、ムゲン様は天敵ともいえるほど相性が悪いのです。


     ……離島組で一、二を争う高火力兵器シューファイも、ムゲン様の前では形無しなのです)


     あ、画霊は一度きりの切り札にもなりましたね!


知恵と知略で強大な敵をあざむき、勝利する。
(どこの諸葛亮孔明かな??)
これ以上ないくらいの完全勝利です。

でも、だからこそ。
あれだけ手を尽くして、すべてを出し切って、それでもシャオヘイたちに負けた。
完全燃焼したフーシーの背中に送るのは、賞賛の拍手しかない。

確かに結果は完敗だ。
だが、これ以上ないくらい最高の戦いだった。
あの激闘の結末がバッドだなんて一ミリも思わない。

理由2 フーシーの選択を肯定したいから

世界は二項対立でできている。

善と悪。
敵と味方。
好きと嫌い。

もちろん、その中間も存在する。だが、ここで重要なのはそこではない。

世界は二つの相反する観念、二項対立でできている。
しかし、ここに大きな落とし穴がある。

”善い”と”悪い”

確かに、世界は二項対立でできている。
だが、

”善い人”と”悪い人”、あなたはどちらと友達になりたいだろうか?

敵より”味方”のほうが、
冷たいより”温かい”ほうが、
悲しいより”嬉しい”ほうが、
悪いより”善い”のほうがいいに決まっている。

世界は二項対立でできている。
しかし、どちらを選ぶかは最初から決まっている。
選択肢は一つだけだ。

でも、だからこそ。
世間とは逆の道を選んだフーシーの選択を肯定したい。

共存ではなく”拒絶”を、
和解ではなく、”闘い”を、
世間が提示する立派で美しい道ではなく、自分の願いにみにくくすがったフーシーの選択を、肯定したいと思うのです。

また、フーシーの選択を肯定することは、羅小黒戦記のテーマである、


「自分で考えろ」


ともつながると思います。

ー・ー・ー・ー

フーシーが最後に示した選択。
決して肯定されない、わがままで自分よがりな選択。

(……このとき、フーシーがシャオヘイに向けて言う「ごめん」。
あの言葉は、


 「(最後まで利用して)ごめん」


という意味なのではないかと思います。

フーシーが最後にとったあの行動。
おそらく、フーシーには勝算があったのだと思います。

”シャオヘイが自分の近くにいる。
 この状況ならば、ムゲンは自分を止めることはできない。
 きっと、シャオヘイを守ることを優先し、自分を見捨てるだろう”と。

それに、シャオへイの領界を奪ったこと。
あの「ごめん」がそれについての謝罪だとするのは、いささか軽すぎると思います。

子ども殺しかけてごめんじゃすまねーだろ。

そのことはフーシー自身が痛いほどに分かっていると思います。)

最後の最後まで自分の願いのために利己的に、わがままにふるまったフーシー。
世間から非難されても仕方が無いと思います。

でも、だからこそ私はフーシーを肯定したい。
フーシーの選択を、何よりも尊重したいと思います。

また、フーシーの選択があったからこそ、シャオヘイも自分の意思で選択することができたと思います。

妖精は、妖精館で暮らす。
そんな一般的な常識を越えて、自分で考えて、自分の居場所を選ぶことができた。


フーシーの選択は、シャオヘイへとつながっている。

フーシーが見せた背中を、弟たちはおぼえている。
この、”つながる”という意味でも、フーシーの(およそ正しいとはいえない)選択を肯定したいと思います。

まとめ
問)羅小黒戦記の結末は、以下のうちどれに当てはまるか?
  ①グッドエンド ②バッドエンド ③メリバエンド

私は、羅小黒戦記の結末は ①グッドエンド であると考えます。

第一に、敗北=バッドエンドではないからです。

確かにフーシーは敗北しました。
取れる方法はすべて取って、全力を出し切って、それでも敗北しました。


フーシーの全てを懸けた渾身の激闘。
これをバッドと呼ぶのはあまりにもナンセンスです。

第二に、フーシーの選択を肯定したいと思うからです。

フーシーは拒みました。
人間と妖精の共存という、世間が提示する正しい道を拒絶しました。

フーシーは和解ではなく、闘うことを選びました。
世界では初めから無いことにされている、後ろ暗い荊(いばら)の道です。
およそ正しいとは言えない選択肢を、彼は自分で考え、選択しました。

自分で考えて、自分で選んだ。

その無二の選択を、私は肯定します。
その選択に込められた彼の葛藤を、苦悩を、尊重したいと思います。

以上、二つの理由から「羅小黒戦記は グッドエンド である」と主張します。

(解答文字数 2792字)