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ハガキでは間に合わないときの手紙ばこ。

教員採用試験合格記 その一

7,8回目の挑戦にして、ようやく合格できました。
昨年、3度目の2次落ちを経験した時は「もうここで働くのは無理なのでは…?」と絶望しましたが、なんとか引っかかることが出来ました。

自分の備忘録として、記しておこうと思います。
もし、これが誰かの手助けになれば幸いです。

 

教員採用試験合格記

 

0 教員という仕事(プロローグ)

 

私は新卒で某携帯販売店のスタッフとして就職し、三年目で教職へと転向しました。
大学4年生のときも教採を受けたけれど、そのときは一次にすら引っかかりませんでした。
在職中も何度か教採に挑戦しましたが、箸にもにも棒にもかからない。
当時は石の上にも三年神話を信じていたので、少しずつ勉強しながら日々の業務をこなしていました。

3年目、やはり教採は一次落ちしてしまいましたが、この仕事にも未来が見えなかったので、考えた結果、教職への転職を決意しました。
せっかく教員免許取ったし! 手持ちのカードは使いたい!

当時は大手キャリアがインターネットやら家事代行サービスやら、それどうなん? という業界と融合をはじめた時期でした。

なりふり構わないキャリアの姿は、やたらめったら触手を伸ばし、なんでもかんでも体内に取り込み、醜く巨大化して鈍重になったあげく倒される、バイオのラスボスのように見えました。
なお、格安スマホが台頭した現在となっては、私の選択はグッドタイミングだったなと思います。


転職してからは非常勤講師として、バイトで収入の不足を賄いつつ、働きました。
途中、一度だけ常勤講師として担任も持たせてもらい、(色々なアクシデントの中で)下手したら死ぬ業界であることを身をもって体験しました。

瑣末な雑務も積み重なれば山となり、じわじわと心を削り取っていく。
余裕を失った心では子どもたちとまともに向き合うことはできません。
「あ! これ授業に取り入れたら面白そう!」そう思えるエネルギーをどれだけ維持し続けられるか?
心の体力管理も仕事のうちとはいえ……人間には限界があります。


それでもなんだかんだやってきたのは、教員って仕事が楽しかったからです。
特に私の担当する国語という教科は、「これより面白いことってないのでは?」とつい思ってしまうほど、魅力にあふれています。


自分が美しいと思うこと、大切だと思うこと、人間の強さや弱さについて、生徒と共に深められること。
人の内側に触れ、人の視線の先を生徒と共に見つめること。
人間というおもしろい存在について、双方向に刺激し合えるこの仕事が、私はものすごく好きです。


(私自身は授業中にこっそりマンガ読んでるようなトンデモ中学生だったので、学生時代は教員になるなんて考えていませんでした。
教育実習の時、「きっと当時の私みたい子ばっかで、授業なんかクソ喰らえって思ってんだろうな…」という思いで教室のドアを開けた瞬間、自分のアホさ加減に恥ずかしくなりました。
目の前の子供たちは、新しい先生や、これから習う未知の世界に胸を弾ませ、瞳をきらめかせて歓迎してくれました。
「この子たちと本気で向き合いたい!」と思い、その情熱のまま現在に至ります。

日本の未来や教育について悲観する声は多いですが、現場としては、あの子たちのキラキラを裏切るようなことだけはしたくないのです。
たぶん、同じ気持ちで教壇に立ってらっしゃる先生は多いのではないでしょうか)


それでも、不合格通知を貰う度に心は擦り切れて行ったので、不安定な状態を続けるより、よそに行こうかと転職サイトに登録もしました。
でも、現状から足を踏み出す勇気もありませんでした。

一応、自転車操業とはいえ生活はできるし、まあこのままでも…と、諦めたとき、転機が訪れました。
色々な条件がそろい、合格に向けて頑張ることができました。

なぜ、頑張ることができたのか。
今回は三つにわけて話そうと思います。

 

0 教員という仕事(プロローグ)

1 校長先生との出会い
2 座学と向き合う
3 面接と向き合う


1 校長先生との出会い

それまでも様々な先生方が手助けをして下さっていたのですが、その校長先生は特に熱心に私の面倒をみて下さいました。

校長先生自ら作文のテーマを提示してくださったり、自分の核となるものを示せるよう「目指す教育のあり方」「理想の教師とは?」など、突っ込んだテーマでの文章を書かせて下さいました。
10作くらい書いたでしょうか。
ご多忙の中、ここまでして下さる校長先生は初めてでした。
また、あなたの強みは表現力だから、それを生かせるようにしよう! と、アドバイスもいただきました。

…こんなに良くして下さって、……この方の前で醜態を晒すわけにはいかないな。
武士道とは死ぬ事と見つけたり。
死に場所(目標)を見つけた私は、生まれて初めて死ぬ気でやらねばと思うことができたのです。


2 座学と向き合う

仕事をしながら勉強するって本当に大変ですよね。
というか、サボっちゃいますよね。
私の場合、一次試験は何度か受かっていたので、元々やっていた勉強法を繰り返すということをやりました。

まず、現代文は週に一、二回は問題を解くようにしました。
私の志望先は評論しか出ないので、評論に集中。
問題集ジプシー(とっかえひっかえ)をしていたので、そのコレクションの中から、解説が豊富で解説文に納得できる二冊に限定し、適当に問題を選んで解いていきました。

問題の中で差がつくといえば、記述問題ですよね。
私も記述問題は苦手です。
しかし、記述問題の攻略に裏技はありません。
答えあわせをするとき、どの要素が拾えていて、どの要素は拾えなかったのか。
地道に分析して、自分の「見落としの癖」をつぶしていくのがいいかなと思います。


古文は数年前まで、ベストな一冊を繰り返すという手法で勉強していました。
しかし、ある時点で頭打ちになってしまったため、やり方を改めました。
当時は『東大の古典25ヵ年』という問題集に取り組んでいました。
(東大に入れたら教採くらい受かるでしょ! って思ってやってた)

基礎的な文法、単語を覚えて九割方の問題は解けるようになっても、残りの一割が解けなかったのです。
それは人物の心情考察に関する問題でした。

なぜかというと、古典世界の考え方が身に付いていないからです。
普段、ファンタジーの小説は読んでいても、作者が現代の人間である以上、現代の文化・常識を下敷きにしています。
共通の価値観の中で物語が作られているのです。
そのため、どんなにファンタジーな展開になったとしても(変身しようが、ナゾの光に包まれようが、急に泣き始めようが)そういうストーリーとしてそのまま受け止めることができます。


古典は価値観の土台が違います。

短い問題文の中だけだと、急に出てくるおとぎ話要素に対して、認知のバグが起こってしまうのです。
(現代のファンタジー、フィクションだと素直に受け止められるのに)古文の場合、急に出てくるファンタジー要素に対して、それが事実なのか、ファンタジー展開として認めていいのか、なぜいきなりそんなことを言い出したのか、素直に受け止めることができなくなってしまうのです。

なんで、こう、なったん??

古典の価値観についていけず、混乱した脳が勝手な解釈でつじつまを合わせることで、無理やり納得しようとします。
つまり、古典の価値観ではそれが常識だけれど、現代常識とはあまりにかけ離れているため、脳みそが勝手に自分の価値観に合うようにお話を作り替えてしまうのです。
私の場合、そこが点数が上がらないウィークポイントでした。

いくら問題を解いても、間違った解釈では正解にはたどり着けません。
問題文という短い文章を繰り返し読んだところで、私の勝手な認知修正は直りませんでした。
これは、問題文という短い文章にしか触れていないというのがいけないのでは?

そう考えた私は、古典を一冊を読み通す、という方法を取り入れることにしました。
寝る前の十五分から三十分ぐらいを読書に当て、一日2,3ページほどのペースで読んでいく。
だいたい一ヶ月半くらいで読破できたと思います。
今回は『竹取物語』の読破に当てました。
ちなみに、去年は『更級日記』を読んでいました。
(薄いのがお勧めです)


漢文も同様の方法を取りました。
ただ、漢文って一冊の面白い小説っていうものがないんですよね。
『春秋左氏伝』とか読んでみたけど、結局は小話の羅列なので、途中で飽きてしまいました。
まあ、私が好きなのは漢詩なので、漢詩でいっか! ってことで、漢詩の本を読んでいました

漢字については、漢検二級を取ろうと思い立って問題集だけ買っていたので、それをよくやっていました。

一次試験は何度かパスしていたので、座学は「ちょっとづつ頑張る」をモットーに、古文や漢文に慣れておくようにしました。

 

 

ちくま評論選 (高校生のための現代思想エッセンス)

ちくま評論選 (高校生のための現代思想エッセンス)

  • 発売日: 2012/11/01
  • メディア: 単行本
 

『ちくま評論選』は現代文で頻出するテーマがほぼ網羅されています。

読んでいるだけでも楽しい、珠玉の評論ばかりです。

こちらはネットで評判だったので購入しました。

解説が細かく、図解もあるのでわかりやすいです。

東大の古典25カ年[第8版] (難関校過去問シリーズ)

東大の古典25カ年[第8版] (難関校過去問シリーズ)

  • 作者:栁田 縁
  • 発売日: 2016/03/17
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

全ての古典・漢文の日本語訳が載ってるのが強み。

基礎的な問題と上級問題(古典常識・仏教知識などが必要とされる問題)があり、幅広さを感じさせる問題集です。

 

茶席からひろがる 漢詩の世界

茶席からひろがる 漢詩の世界

  • 作者:諸田 龍美
  • 発売日: 2017/08/30
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

断片だけ聞いたことあるフレーズに対して、深い理解を示してくれます。

特に楊貴妃の色気に関する考察がおもしろかったです。




さて、次は一番向き合わねばならない面接です。